サルビアの育てかた
「最近のお父さん、コンロの使い方が分からなくなっちゃったみたいなのよね。火も強くしすぎるし、消し忘れも多くなってしまったのよ……」

 母は複雑な顔をした。

「それにお父さん、いつもあの毛布を持ち歩くようになったでしょう? 危ないから火を使うときは手伝いますと何度も伝えているんだけど、お父さん本人は言われたこともすぐ忘れてしまうから本当に困っているのよね……」
「それはまずいな。何か対策を考えないと」

 正直話が噛み合わないとか、失くしものが多いとか、父がそのへんで漏らしてまうことなど、ストレスはあるがどうにでもなる。ただし火の取り扱いに関しては、もしもの事態があっては絶対にダメだ。

 俺たちはしばらくその場で考え込む。
 するとレイが、コンロを眺めながら口を開いた。

「火が怖いんだから、いっそのこと……IHに変えちゃうのはどう?」

 でもリフォーム代がかかっちゃうね、とレイは苦笑する。
 しかしその提案に、俺は首を縦に振った。

「いや、いいんじゃないか。火を扱わなくなれば危険も減るしな。費用は何とかなるだろ。もし厳しいようだったら、俺も半分位は出すから。母さん。どうする?」

 万が一を考えれば、金の問題より安全を優先にしたい。
 母もレイの話に頷く。

「そうね。いいと思うわ。お金のことは大丈夫。ただ、今までリフォームのことはお父さんが全部やってくれてたのよ。悪いんだけどヒルス、見積りをお願いしてもいいかしら?」
「ああ。それくらいやるよ」
「それじゃあ、イベントが終わってからでいいから頼むわね」
「分かった」

 リフォームが終わるまでは、三人で父の火の取り扱いには注意して見守っていくことにした。
< 267 / 847 >

この作品をシェア

pagetop