サルビアの育てかた
 一通り笑った後、フレアは落ち着いた声になった。
「わたしが思うに、レイはきっとあなたに恋をしていると思う」
「は? それはないだろ。だってレイは……」
「『俺のことを実の兄だと思っている』でしょ? そんなの分かってるわよ」
「じゃあどうして」
「あなたたち二人は血の繋がりがあるわけじゃない。これはわたしの勘だけど……レイは無意識のうちに本当の関係について気づき始めているんじゃないかな」

 フレアの真剣な言い様に、俺は束の間考え込んだ。
 たしかに最近のレイは全く妹らしくない発言もするし、俺が抱擁を求めると受け入れてくれる。だけど──レイが俺のことを一人の男として想っているなんて、そんな自惚れた考えなど否定するしかないだろう。

「もしレイが俺を実の兄でないと勘づいていたとしても、いつか事実を知ったとしても、関係は変わらない。この先もずっと義兄妹のままだ」
「相変わらず焦れったいわね。ま、事情が事情だからあなたが慎重になるのも無理ないけど」

 そう言うとフレアはまたいつもの笑顔に戻る。

「どっちにしたって、わたしは警告したからね。今後、気をつけなさいよ!」

 左手で髪をかきあげ、フレアは背を向けた。

「そろそろレイも着替え終わる頃じゃないかしら。戻りましょ」

 そう言って何事もなかったかのように歩き出す。

 ──なんだろう。俺たちのためを思っていつも見守ってくれているフレアだが、そのときの後ろ姿がどことなく寂しそうだった。

「待ってくれよ」

 フレアの隣に並び、俺は人目を気にしながらその場を後にした。
< 307 / 847 >

この作品をシェア

pagetop