サルビアの育てかた

 と思って緊張していたけれど。心配なんてさほど必要なかったみたい。

 ──特待クラスの練習場に初めて足を踏み入れたとき、少し拍子抜けしちゃった。
 クラスのメンバーは意外にも優しそうな人たちばかり。あちこちで他愛ない会話が繰り広げられていて、和気あいあいとしている。

 なのに練習が始まった瞬間、全員ダンサーの顔に切り替わるの。
 ジャスティン先生が練習場にやって来ると、メンバーたちはそれぞれのポジションに素早く移動する。先生は普段柔らかい物腰なのに、音楽が流れると指導者の姿に変わった。
 さっきまでの和やかな空気が一転し、ピリピリとした緊張感が伝わってきて、私は更に身が引き締まる思いになった。  

 今度のイベントの為に、事前に練習してきたダンスの振り付け。激しいムーヴと細かいステップがいくつもあってなかなか難しい。テンポに乗って、私は隅の方で必死に踊り続ける。
 ヒルスやメイリー、私より十くらい年上の人たちがセンターで堂々としたダンスを魅せていた。誰も彼もが機敏で、しなやかで、迫力のある踊りをしていて、本当に格好いい。

 全員がチームワークを大事にしているのが伝わってきた。お互いがお互いのリズムに合わせようと呼吸を感じ、ムーヴをよく見てるの。
 その中で、それぞれの個性も惜しみなく表現してた。誰か一人が変に目立とうとすることは決してないけれど、さりげないアピールでステップを決め込んだ。
 個性とチームワーク両方を大事にする、そんな上品なダンスだと思った。
 今までのクラスとはレベルがまるで違う。特待クラスにいる全員のダンスが最高にクールだ。
 私はできるかぎり遅れを取らないよう、とにかく集中した。
< 32 / 847 >

この作品をシェア

pagetop