サルビアの育てかた


「叔父さん、ここって……」

 一時間ほどで行き着いたのは、ロンドン市内で最も大きなコンサート会場であった。以前、俺とレイがペアダンスをした際に訪れたゆかりある場所。
 今日もイベントが催されている。入り口付近には『ロンドンダンス大会』の文字が。

 ──ああ、そういうことか。叔父はハイレベルのダンサーたちの踊りを見せて、俺を元気づけようとしてくれているんだな。
 たしかに他人のダンスを見てテンションは上がるかもしれない。だけど、完全に復活するきっかけになるかは微妙だな……。

 だけどせっかく連れてきてもらったんだ。今日はとことん楽しんで、他のダンサーから学べるものがあればそれを盗んで持ち帰ろう。

「急げ。ヒルス。そろそろ時間だ」
「時間?」

 慌てたように叔父は急ぎ足で会場内へ入る。
 俺が大会のパンフレットがないか会場内をあちこち見ようとすると、

「早く来い!」

 慌ただしく手を引かれてしまう。

「どんなダンサーが出るのか、名前くらい確認させてくれよ」
「そんな暇はない!」

 焦る叔父に圧倒され、俺は言われるがまま観客席へと連れて行かれる。
< 379 / 847 >

この作品をシェア

pagetop