サルビアの育てかた
「──レイ、そろそろ出番だよ。準備して!」

 そのときだった。タイミングよく、ジャスティン先生が手招きをしてレイを呼んだ。

「はい、今行きます!」

 レイは明るく返事をしてからその場を後にする。
 残念そうに肩をすくめるライクだが、他の「獲物」を見つけると、ふらふら他のスクールの女子たちに近寄っていった。

「なぁ、君たちどこのスクールの子? これから本番か?」

 ライクが声をかけたのは、十歳前後のレイと同年代であろう二人の少女だ。柄の悪そうな大男にいきなり声をかけられ、彼女たちは明らかに引いている。
 やめておけよ……呆れながらも、俺は止めに入ろうとした。

 すると、横からジャスティン先生が颯爽と現れた。にこやかにライクの肩を軽く叩くと、先生はこんなことを口にする。

「ライク、君は本当にフレンドリーだね! レディたちも君のハンサムな顔に驚いているようだよ」

 皮肉たっぷりの先生の言葉に、ライクは途端に口を閉じた。その隙に、女子たちは逃げるように立ち去っていく。
 いくらライクでもジャスティン先生には敵わないのだ。

「さあ、ライク。僕と一緒に観客席でみんなのダンスを観賞しようじゃないか。特等席を用意してもらったんだよ!」
「はい、先生」

 大きいはずであるライクの背中は、先生と並ぶといかに小さいか。
 先生はさりげなく俺にウィンクするとライクと共に観客席へと消えていった。
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