サルビアの育てかた
 ──いよいよだ。程なくして、レイの出番が来た。
 まだステージは暗転していて姿は見えない。それでも伝わってくる、彼女が「ダンサー」に変わる瞬間の熱い空気が。
 ライトが照らされ、レイが踊り始めると会場内の雰囲気が一気に変わった。
 音楽が会場中に鳴り響く。低音がよく効いた、アップテンポのクールな曲。レイが自ら選んだ自由曲は、モラレスという世界的アーティストが歌う「SHINING」だった。

【雨が降っても、風が吹いても、涙を流したあとは前を向こう。晴れの日は必ずやってくるから】

 そんな前向きな歌詞で、レイはこの詩をとても気に入っていた。

 曲に合わせてテンポを刻み、華麗なステップを踏むレイのダンスは魅惑的で美しく、輝いていた。十歳とは思えない機敏なムーヴ、綺麗に回転する度に黒のツインテールも一緒に舞い踊る。レイにしかできない魔法のようなダンスだ。その場は異世界へと染め上がった。

 誰も彼もがステージで踊る彼女に釘付けになり、魅了されているのが分かる。もちろん、俺もその中の一人。
 レイは普段どおりに──いや、今まで以上に最高のパフォーマンスをしている。

 胸が熱くなり、俺は舞台袖で彼女のダンスから目が離せなくなった。
< 41 / 847 >

この作品をシェア

pagetop