サルビアの育てかた
 ──今朝の話だ。俺はいつものようにジャスティン先生の前でどうしても決められなかった側宙、バク宙、コークスクリューを練習していた。今日はフレアとレイも見守ってくれていて、いつにも増して緊張感が半端じゃなかった。
 だけど、祈るように俺を見つめているレイが近くにいたからか、一層気が引き締まっていた。

『レイの前で格好悪いところは見せたくない。今日こそは絶対に全ての技を決めてみせる』

 その一心になった。

 するとどうだろう。今まで恐怖心で失敗続きだった側宙とバク宙が、勢いでジャンプするとあっさりと決めることができたんだ。

 ──怖くない。技を出す前の、あの怖さが驚くほどなくなっている!

 コークスクリューもそうだ。 この技はジャンプしながら空中で斜めに身体をひねり、回転してから着地するという、アクロバットの中でも難易度が高い方で俺も苦手だった。

 技に入る前、鏡越しに映るレイの顔を見た。すると彼女は、柔らかい眼差しを向けて、
(ヒルスなら大丈夫。頑張って!)
 心の声でたしかに声援をくれたんだ。

 息を整え、全身に血が行き渡るように意識を集中させる。すべての筋肉を使い、足を踏み込み、俺は一気に飛び上がり身体を空中で回転させた。技を繰り出すのは、一瞬の出来事。

 俺はコークスクリューも難なくクリアすることができたんだ。もしかすると、復帰する前よりも上手く決められたのではないか、と思うほどパーフェクトな仕上がりだ。
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