サルビアの育てかた
「──そういえば先生。あの子はまだ来ないんですか?」

 アルコールで顔が少し赤くなり始めたフレアは、ジャスティン先生の肩に右腕を乗せながら酒を飲んでいる。いつものことなので先生は特に気にする様子もなく平然と答えた。

「うん、さっき連絡が来たからそろそろ到着すると思うよ」

 携帯電話をカチカチと両手で操作しながら、ジャスティン先生はパブの出口の方を気にしていた。

 二人の会話に俺は首を捻る。

「もう一人って、まだ誰か来るのか?」
「ええ、そうなの。すっごくいい子なのよ。数年ぶりに、スタジオに新しい子を迎えたのよ!」

 フレアの言葉を聞いて、俺はワクワクした。新人、ということはイントラがもう一人増えるということか?
 仲間が増えるのはいいことだ。
 そんな風に考えていた。

「あっ、でもヒルス。勘違いしないでね!」
「何が?」
「今度来る子はね──」

 と、フレアが途中まで言いかけたときだ。
 隣でジャスティン先生がぱっと手を上げ、誰かに手招きをした。
 先生の目線の先を見てみる。そこにいたのは、見ず知らずの一人の少年が入り口に立っていた。
 歳は十代半ばくらいか。黒い髪に爽やかな笑顔。手を振りながらこちらに向かってくる。
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