サルビアの育てかた
 出番が終わり、拍手喝采の中二人は舞台裏にはけてくる。どちらもとてもいい顔を浮かべていた。

「二人ともお疲れ様。少ない練習時間の中でよく頑張ったな」
「ありがとう。ヒルスが指導してくれたおかげだよ。ね、ロイ?」

 満面の笑みでレイは興奮気味にロイにそう言う。
 いつも以上にハイテンションなロイは、大きく頷いた。

「ヒルス先生、ありがとうございます。こんなに素晴らしいステージでボクが全力でダンスが出来たのは先生のおかげです」
「違うよ。それはロイの実力だろ?」

 俺がそう言うと、ロイは顔を上げてなんとも言えない表情を浮かべる。

「いいえ、ヒルス先生がいてくれたから伸び伸びと踊れるんです。……誰かに強制的にやらされるのではなく、ボク自身が好きで何かを成し遂げる喜びをヒルス先生が教えてくれたのですから」

 爽やかな笑みで、ロイはこれ以上ないほど幸せそうなオーラを放っていた。
 彼の話を聞き、俺は自然と笑みが溢れる。そっとロイの肩に片手を置いて、俺は静かに言葉を向ける。

「本当にロイは、最高のダンサーだ」

 ロイは汗をたくさん流していた。彼の瞳の中から潤いが溢れ落ち、それは汗と共に溶けていく。

「よかったね、ロイ」

 彼の背中を優しくさすりながら、レイは柔らかい表情を浮かべる。

 ──俺はこの時、確信した。ロイはとても幸せ者なんだということを。
 こんなにも夢中になれるものがあって、熱心に練習した成果を魅せびらかせる場があるんだ。誰もが羨むほど彼の毎日は充実しているに違いない。

 目から溢れるものを止められないでいるロイに、俺は静かにタオルを手渡す。
 ステージに立つ時は、クールで人が変わったように真剣に踊るロイだが、本当はまだ幼い一人の少年なんだ。俺はそんな彼のことが、可愛い弟のように感じた。

「ヒルス先生、これからもボクにダンスを教えてください」
「ああ、もちろんだ。これからも一緒に頑張ろうな」
< 478 / 847 >

この作品をシェア

pagetop