サルビアの育てかた
 俺は一体どうしたいんだろう。このままレイと仲良くフラットへ帰れば良いのに。言葉にしなくたって、レイにも俺の気持ちは少なからず伝わっているはずだろ。
 普通兄妹でこうやって抱き合ったりするか? 出掛ける時に仲良く手を繋いだり腕を組んだり、「大好き」なんていう言葉も口にしないはず。それに──寝ている妹に唇をこっそり重ねたりもしないし、兄の頬にあんな風にキスするわけもない。
 今まで俺とレイは、兄妹らしからぬことばかりしてきた。だから今更恥ずかしがるのもおかしな話だ。
 だけど俺はフレアの言う通り、レイのことになるとあれこれ考えて臆病になる。頬にキスをされただけで緊張して、まるで心が思春期の少年みたいに熱くなってしまうんだ。

 俺はそっと彼女の体を解放する。名残惜しさでいっぱいだった。

「すぐに帰るから。今日は一人で帰ってほしい」
「……うん」
「ごめんな、レイ」

 俺は逃げるように、ダッシュでレイから体を背けてその場から立ち去った。
 本当は用事なんて何もない。

(俺はとんでもないヘタレ野郎だな……)

 俺の後ろ姿をいつまでも見続けるレイの表情が、今までにないほど悲しい顔をしていたなんて、この時の俺は全く気づいてあげることが出来なかった。
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