サルビアの育てかた
 もう一度強く彼女を抱きしめ、耳元で小さく呟く。

「レイ、泣かないで。ごめん、俺……変なこと言ったかな」

 するとレイは震える両手で俺の背中をぎゅっと抱き寄せ、涙声でこう返事をするんだ。

「ううん。違うの。嬉しくて……」
「嬉しい?」
「だって、ヒルス……私のこと本当の家族だって言ってくれるから」

 今までずっと、家族として一緒に過ごしてきたんだ。そんなの当たり前のことなのに。どうしてレイは嬉し涙を流すのかな。

 俺とレイの間に空気すら入る隙がなくなるほどに、彼女を更に強く抱き締める。

「血の繋がりなんて関係ないよ。俺たちには固い絆があるんだから。レイも分かってるだろ?」
「うん、分かってる。なんとなく不安だったの。でもね、ヒルスの一言で救われた。……ありがとう」

 レイは顔をぐっと顔を近づけてきて、俺の目線からその輝く瞳を離さない。
 俺の胸の鼓動はもはや限界寸前だった。これ以上心拍が高まると、レイにも俺の心臓の声が聞こえてしまう。

 あまりにも美しい、彼女の表情。

 彼女の頬にそっと手を添え、俺は最後にレイに問いかける。

「レイ、いいかな」

 静かに頷き、レイはゆっくりと瞳を閉ざした。

「うん……いいよ」
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