サルビアの育てかた
「レイは、分かっているんだな?」
「……うん」

 迷いなんか捨てて、目と目を合わせ。
 真剣な顔をしながら、俺は真実の言葉を彼女に向けた。

「俺とレイは、血の繋がらない兄妹だよ」

 ──レイの瞳の奥は少しだけ潤いを見せた。だけど彼女は決して、目の中のものを外に流したりしない。
 俺も笑顔を向けたままレイに語り続ける。

「レイは自分がどこから来た娘か知っているか?」
「うん。知ってる……」

 レイを傷つけたくない一心から、俺のやりかたは遠回りになってしまう。それでも、ひとつひとつの言葉を丁寧に並べていく。

「全部、知ってる通りだよ。レイは元々孤児だった。親がいないレイを、父さんと母さんが家族として迎え入れたんだ」
「うん……そう。そうだよね」

 一度俺の目から瞳を外し、レイは俯きながら胸の中に顔を埋めてきた。

「孤児院にいたことは何も覚えてないの。だけど、これだけは知ってる。血が繋がっていなくても、お父さんとお母さんは私にたくさんの愛情をくれた。まるで本当の家族みたいに……」

 切なさで溢れる彼女の声は、とても美しかった。
 それだけが伝わっていれば、天国にいる両親も安らかに眠れるだろう。

「レイ、ひとつだけ間違ってるよ」
「……えっ?」
「レイは俺たちの【本当の家族】だろ? だから、レイの言ったことは少し違うかな」

 俺の考えを伝えた途端、レイはもう一度こちらを見つめてくる。彼女の顔が真っ赤に染まっていく。みるみるうちに目から涙が溢れ、止まることを知らないんだ。

「レイ、どうした……」

 なぜ彼女が泣き出したのか分からず、焦り、俺はあたふたしながらサッとハンカチを手渡す。
 小さく「ごめん」と言いながら、レイは一生懸命目元を拭き取るが、なかなか溢れる雫を止めることが出来ずにいた。
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