サルビアの育てかた


 一時間ほど車を走らせた後、懐かしい風景が俺たちの前に現れる。
 ハニーストーンの家々が立ち並ぶ田舎町。田園風景が広がる自然豊かな地区。馬に乗って道路を走る人。久しぶりに訪れると、何だかファンタジーな絵本の世界に入り込んだような気分になる。

 それからようやく辿り着いた。実家があった、跡地に。
 周辺の景色は何も変わっていない。近所の家も目の前にある道路も、何事もなかったかのような顔をしている。

 たったひとつだけ変わったもの。それは──そう、二階建てで堂々と建つ新しいダンススクールだ。
 新スクールは、濃いハチミツ色の新しい石で造られていて、入口のドアもお洒落な作りだった。

「わあ。凄いね!」

 レイは興奮したように声を上げる。
 敷地内の駐車場に車を停めると、ジャスティン先生が満面の笑みで出迎えてくれた。

「やぁヒルス、レイ。よく来てくれたね!」

 ジャスティン先生の笑顔は今までにないほどに輝かしい。綺麗にスーツを着こなし、今日は珍しくリーゼントヘアにしていた。

「先生、本当に立派なスクールですね! 私驚きました──」

 車から降りてレイは楽しそうに先生の元に駆け寄るが、急に黙り込んでしまった。
 俺も彼女の後を追うように車から降りるが、その瞬間に笑顔を浮かべることが出来なくなってしまった。

「ヒルス! 久しぶり。会いたかったよ!」

 ジャスティン先生の後ろからひょっこり顔を出したのは──絶対に会いたくない相手だった。
 顔を見ただけで胸糞悪い。
 俺の頬はこの上なく引きつってしまっているだろう。
 まさか。どうしてこいつが。

「……あんたも来てたのか。メイリー……」
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