サルビアの育てかた
 もうこの女と会うことはないと思っていたのに。
 どことなく不適な笑みを浮かるメイリーを見て、俺は硬直してしまう。ものすごい嫌悪感だ。
 今までこの女は、俺の前で平気な顔して何事もなかったかのように振る舞ってきた。
 吐き気がする。
 濃い化粧に、露出の多い派手な服装。メイリーが視界に入るほど、俺の中で負の感情がふつふつと音を立て溢れ出てしまう。

「あたしもこれからここに通うんだよ。だから、ジャスティン先生にお願いして見に来たの!」

 不自然に高い声を出すメイリーは、俺とレイの間を割って入ってくる。すると、いきなり腕を組んできた。
 ありえないほどの鳥肌が立つ。

「ね、ヒルス一緒に行こう」

 さりげなく腕を離そうとするが、メイリーは全く放す様子がない。
 ふとレイの方に視線を向けると、彼女は悲しそうな表情を浮かべていた。
 そんな顔をされると、俺も辛くなる。

「放せ」

 わざと低い声を出し、大袈裟にメイリーの腕を振り払う。

「えー、だめなの?」
「歩きづらいし、あまりくっついてほしくない」
「冷たいなぁ。せっかくヒルスと会えたんだから、お話したいのに」
「……話?」

 俺はその単語に強く反応した。眉間に皺を寄せ、圧の掛かった声でメイリーに言う。

「だったら後で話がある」

 故意に威圧的でいるのにメイリーは気にする様子もなく、むしろ目を輝かせながら頷いた。
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