サルビアの育てかた
 女の嫉妬と言うのは本当に理解不能だ。
 メイリーはレイをライバル視していたのは俺も知っているし、スクール仲間もみんな気づいていたと思う。
 しかしレイは自分のペースでただただ純粋にダンスを頑張っていただけだから、メイリーを相手にしているつもりは全くなかっただろう。

 建物内に入った後も、俺の苛々は止まることはなかった。むしろ嫌悪感が増す一方だ。

「見て見てヒルス! ここが特待クラスの練習場だよ。壁いっぱいにミラーがあって凄いね!」

 はしゃいでいるだけなら別に構わない。だけどメイリーはわざわざ俺とレイの間に入ってきて、しかも手を握ってくるんだ。さっきから俺の寒気が半端ない。

「触るな」
「えー? 照れてるの?」
「そうじゃない。本当にやめてほしい」

 低い声で突き放しているつもりなのに、メイリーはケラケラと笑っている。

 この女、一体どういうつもりなんだ。いつも以上に絡み方が面倒臭いし、ベタベタ触ってくるのなんて本当にありえない。
 こんなところ、レイに見られたくないのに。彼女の顔は終始引きつっている。

(本当に最低な日だ……)

 朝楽しみにしていたワクワク感は全てがどこかへ消え去ってしまう。俺の機嫌も最悪だ。
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