サルビアの育てかた
 俺はその話を聞いて、一気にテンションが上がった。レイの肩を両手で掴み、喜びを爆発させる。

「凄いなレイ。レイのダンスが、あのモラレスに認められたんだろう!」

 思わず声が大きくなってしまう。
 レイは笑顔で、小さく首を縦に振ってくれる。だけどその口調は、どこか不安そうだ。

「私もその話を聞いて凄く嬉しかったの」
「もちろん受けるだろう?」
「うーん……」

 レイは何かを思うように、少しだけ目線を下に向ける。

「ちょっと、不安もあるかな」
「不安?」
「モラレスのバックダンサーとして活動するようになったら、きっと今よりも有名になっちゃう。名前が知られるのは嫌じゃないけど、やっぱり怖いな。何か変なことにならないかなって」
「変なこと……」

 彼女の話を聞いて、俺はハッとした。

「よく有名人がちょっとしたことで、メディアに晒されたりしてるでしょ? 私は……別に隠し事なんて何もないけど、やっぱりネタにされやすいのかなって……」

 はっきりと話しているわけではないが、彼女の心配事は俺にも理解出来る。

 ──レイは元孤児なんだ。
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