サルビアの育てかた
 ロイの瞳の色が、今までにないほどに抜けていく。

「あの人はレイさんを執拗なほどに敵視していたみたいですね。ニヤニヤしながら、メイリーさんはある日突然ぼくにこんなことを言ってきたんです」

『レイって元孤児で、親ともヒルスとも血が繋がってないらしいわよ。家族だと思っていた人たちが、ただの赤の他人だなんて可哀想よね。本当に不幸な子だよ』

「馬鹿にしたような口調で話すメイリーさんに、ボクは心底ムカつきましたね。思わず反論してしまいましたよ」

『何が可哀想なんですか? 血が繋がっていないから本物の家族でないという理論でもあるんですか? それに、元孤児だからって不幸なわけでもないですよね。そうやって偏見でしか物事を考えられない人がよっぽど可哀想です』

「ボクがそう言うとメイリーさんは機嫌が悪くなってしまい、数日間まともに口を聞いてくれなくなりましたよ。まあ、ボクはああいう人あまり好きじゃないんで、どうでもよかったんですけど」

 淡々と話すロイの表情までも、完全に輝きが失われていた。普段は爽やかなロイが、こんなにも厳しい口調になるのは珍しい。

「あの人、怒るとすぐ態度に出すし何をしでかすか分かりません。特にレイさんのことに関してはいつも嫌味ばかり言っていて、ボクも他の仲間たちもうんざりしていました。だからヒルス先生、あの人には気をつけてくださいね」
「……ああ、そうだな」

 気をつけなければいけないのは分かっている。だけどもう、手遅れだ。
 レイには事実が伝えられてしまったのだから。
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