サルビアの育てかた
 ──レイが幼かった頃、彼女は「怖い夢を見た」と夜な夜な怯えていることが幾度となくあった。夢の内容を聞く限り、彼女が赤子の頃生みの親に酷い仕打ちをされていた出来事だと俺は今になっても思う。
 覚えていないだけで、レイの記憶の奥底ではしっかりとトラウマとして残ってしまっているんだ。
 現在は夜中に魘されることはなくなったが、いつ彼女の心が再びあのトラウマを呼び起こしてしまうか分からない。
 その時は彼女の支えになってやりたいと俺は強く思う。

「それにしても、ロイはどうしてレイの事情を知っていたんだ? シスターから聞いたのか」

 素朴な疑問を俺が投げ掛けると、ロイは首を大きく横に振った。それから、声を暗くして答えるんだ。

「いえ。あの人から……。メイリーさんから聞かされました」
「メイリー……だと?」
「はい。実はボク、ジャスティン先生の弟子になる前、ダンススクールに通っていたんですよ」
「そうか……」

 あの女の名を聞き、俺の心臓はドクッと唸り声を上げる。顔を思い出しただけで反吐が出そうだ。
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