サルビアの育てかた



 長い時間、ロイと話し込んでしまった。スタジオを出た頃には既に夕陽が傾いていた。
 九月になると、この辺りはコートがなければ過ごしていけないほどの気温になる。だけど俺はこの季節が好きだ。
 街並みに佇む木々の色が美しくオレンジに染まり、目の中を癒やしてくれるから。
 どこからかほのかに漂うコスモスの香りに包まれながら、俺は彼女が待つ憩いの場所へと足を向ける。


 部屋に戻ると、バルコニーでしゃがみこむレイの姿があった。俺は頬を緩ませ、彼女のそばへ歩み寄る。

「ただいま、レイ」
「おかえりヒルス」

 長い間外にいたのだろうか。レイを俺が後ろから抱き締めると、彼女の体が冷え切っているのが伝わってきた。

「風邪引くぞ?」
「うん……」

 元気のない返事だ。
 不思議に思い、レイの顔を覗き込む。
 彼女は寂しそうな瞳で一点を見据えていた。視線の先を見ると──

「そんな」

 ドクンと、胸が唸った。

 そこには、花びらの一部が茶色に染まってしまった『サルビア』たちが、植木鉢に力なく並んでいたんだ。
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