サルビアの育てかた
「私の育てかたが悪いのかな……。お母さんならどんな季節にも『サルビア』を元気に咲かせていたのに」 

 レイは枯れかけの花たちをじっと眺めたまま、目線を落としていた。
 秋の風が、冷たくなった黄色い木葉を乗せて俺たちの横を静かに通りすぎていく。

「お母さんが残してくれた『サルビア』なのに。このままじゃ、種も取れなくなっちゃう……」

 弱々しい声でこちらを振り返るレイの表情は切ない。
 彼女はそのまま俺の胸の中に抱きついて来た。

「レイが一生懸命、毎日花に水やりをしていたのを俺は知ってるよ」
「ヒルス……」

 レイの声はこの上なく震えていた。
 家族の思い出として形に残されているものは、もう他に何も残っていない。あの燃え盛る炎によって全てを奪われてしまったのだから。
 だからこそ、たった一輪だけ生き残っていた『サルビア』のおかげでレイが立ち直れたのを俺は知っている。その『サルビア』の種を採って、新たな花たちのことも大切に育てていた姿もずっと見てきた。
 だけど──どんなことにもうまくいかない現実はある。
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