サルビアの育てかた
 私、ちゃんと覚えているんだよ。父と母が亡くなった後、あなたが一度会いに来てくれていたのを。
 本当はあの日、一言でもいいからお話がしたかった。だけど私は、自分が元孤児であったことをまだ知らないふりをしていたから。話したい気持ちを隠しながら、ぐっと我慢していたの。

 私は彼女にふっと微笑みかける。

「家族のおかげです。あなたが巡り合わせてくれた、私の大切な家族がいてくれたから、ここまで来ることが出来ました。とても幸せなんです。本当にありがとうございます」

 私の言葉を聞くと、彼女はそっと抱き締めてくれた。

 凄く安らぐ。心が穏やかになる。全身がふわふわして、まるであたたかい愛情に包まれているような感覚になる。
 私もたまらなく彼女のことを、ギュッと抱き締めた。

「それを聞いて安心したわ。あなたは幸せになるべき子なの。……お父様とお母様のことは残念だったけれど、今でもあなたが元気でいてくれて、わたしは本当に嬉しいです」
「はい、大丈夫です。父と母のことがあっても……私には残された大好きな家族がいますから」

 これも事実。彼がそばにいてくれたから、私は前を向いて生きていける。
 彼の顔をふと見てみると、とても照れくさそうに赤くなっているの。分かりやすくて、可愛い。本当に大好き。彼が支えてくれたから、今の私がいる。
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