サルビアの育てかた
「レイは知らないよな?」

 俺はもうひとつ、レイにあることを教えてあげようと思った。

「知らないって?」

 小首を傾げるレイは、不思議そうな表情を浮かべる。
 俺はレイの肩にそっと触れながら、続きの言葉を紡いだ。

「レイの名前は、シスターが付けてくれたんだよ」
「えっ。そうなの?」

 彼女は少し驚いたように目を見開く。

 ──俺が小さい頃、母が言っていたんだ。その時の俺は、レイにあまり興味がなかったから話半分で聞いていたけれど、あの話を今でも覚えている。

「家族としてレイが家に来てすぐの頃、母さんがこんな話をしていたよ」

『レイにはもう一人お母さんがいるのよ。誰だか分かる?』
『はあ? ……意味が分からないけど』
『そんな顔しないで、ヒルス。レイという名前を付けてくれたのはシスターなの。【光】のような存在になってほしい、という意味が込められているの』
『ふーん……』
『レイには名付け親がいて、わたしとお父さんという育ての親がいる。一緒に暮らすあなたもいて、家族がたくさんいるレイは幸せ者ね』
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