サルビアの育てかた
 数日後。
 レイのデビュー前、ジャスティン先生のダンススタジオには多くのスタッフが集結していた。殆どがモラレスの事務所に関連する人たち。本格的な収録はレイが十八歳になってからでないと出来ないが、その前のリハーサルの為に集められた。

 今まで経験したことのないピリッとした空気が漂う。

「最初のサビなんだけど、一回ヒルス君とレイちゃんに照明当ててくれる? 出来たらブルー系がいいわ」
「カメラワークは引いて。全体を映すイメージで」
「ここはソロだから一回アングル変えるわよ」

 次々にスタッフたちに指示を出すモラレス。雰囲気がいつもとまるで違う。緊張感がひしひしと伝わってきて、隣にいるレイすらも強張っている様子だ。もちろん俺も例外ではない。
 モラレスがどれだけ音楽の世界に誇りを持って、真摯に力を注いでいるのか感じられるほどだ。

「それじゃ、一回全体の流れを掴みたいから一通り踊ってみましょう。ヒルス君、レイちゃん、よろしくね」
「はい」
「よろしくお願いします」

 どんなに緊張していても関係ない。音楽が流れると同時に、俺とレイはダンサーの顔に切り替えた。
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