サルビアの育てかた
「レイ」
「うん?」
「……これからも一緒に、二人で思い出をたくさん作っていこう」

 右手でレイのしなやかな頬に触れ、俺は囁くように言葉を捧げた。

「俺たちは二人きりの家族だけど、これからもレイと一緒に笑い合っていきたい。特別なことなんて何もしなくてもいい。一日一日を、レイと大切に過ごしていきたい」
「……ヒルス」

 俺の右手をしっかり握ると、レイはほんのり頬を赤く染め、小さく頷いた。

「私も同じ気持ちだよ」

 空から溢れる雫の数が、どんなに増えていこうが関係ない。俺たちの空間だけは相変わらず熱に包みこまれているんだ。
 
 母の『サルビア』は、役目を終えたかのように枯れてしまった。だけど、前を向くきっかけをくれた大切な花なんだ。
 俺は……俺もレイも、決して忘れない。母の『サルビア』には愛情がたくさん込められていて、不思議な魔法を持っていたことを。

 彼女の幸せを守るために、これからも守り抜いていきたい。
 俺が改めてそう思った瞬間だった。
< 631 / 847 >

この作品をシェア

pagetop