サルビアの育てかた
 ──心のどこかで、俺もレイも覚悟はしていたんだ。『サルビア』は寒い時期に咲くものではない。どんなに大事に育てていても、いつかは枯れてしまう。

 優しくレイの頭を撫でてから、俺は静かに言葉を向ける。

「生き残りの『サルビア』を見つけたあの日から、もう二年は経つ。よく頑張ってここまで花を育てたよ。本当にレイは、凄いな」
「………」

 彼女は言葉を口の中に閉じ込めたまま、じっと俺を見つめた。そして胸の中に顔を埋めてきて、両手を背中に回してくる。

「ねぇ……ヒルス。思い出は、残るんだよね?」

 レイはあの会話を思い出すように、ゆっくりと話を紡いでいった。

「ヒルスの言葉はいつも私に元気をくれるよ。お花が枯れちゃっても、大丈夫。私たち家族が四人で過ごした日々だけはなくならないんだよね。そう考えれば、何も悲しくない」

 そう言うレイの瞳はとても美しくて。俺の胸はドキドキを止めることが出来ない。
 常に前を向こうとするレイの力強い言葉は、俺にも勇気を与えてくれる。
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