サルビアの育てかた


 悪魔の匂い
 悪魔の表情
 悪魔の声
 悪魔の抱擁
 悪魔の冷たい両腕

 あれは、夢なんかじゃない。身体が覚えている。恐怖の対象を、しっかりと覚えている。
 悪魔に抱きしめられた瞬間、私は吐きそうになるほど怯えた。

 叩かれる、殴られる、熱湯で痛めつけられる。

 私の全身が痙攣しているかのように震えた。
 胸の上の痕がヒリヒリ痛み始めた。呼吸が荒くなり、苦しくてしにそうだ。

 今すぐ逃げないと。だけど私はあの時、足がすくみ、腰が抜けて動くことが出来なかった。
 悪魔に言われるがままだった。悔しくて悲しくて仕方がない。
 私は強いはずなのに。こんなことで怯えたりしないと思っていたのに。

 だけど私は何一つ克服出来ていなかったの。
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