サルビアの育てかた
 ──レイは昼間は平気な顔をしているが、夜になると再び魘されるようになってしまった。酷い時は朝方まで眠れないこともしばしばある。
 俺もレイも、心身共に相当な疲れが溜まっていた。

 この事態をどう解決すれば良いものか。まさか彼女の【トラウマ】が再び現れるなんて思いもしなかった。
 彼女が真夜中に怖い夢を見たら、俺はどうにか心を落ち着かせてあげようと必死だ。だけど、それは一時の難を回避する為だけの方法であって、根本的な解決にはならない。
 レイは怯えている。またいつ、あの悪魔が自分の前に来るのか分からない。怖くて恐くて仕方がないんだ。

「──ヒルス。大丈夫かい?」
「……えっ?」

 俺がぼんやりしていると、いつの間にかジャスティン先生が心配そうな顔をしてこちらを見つめていた。

「あっ、先生。すみません。何ですか」
「ちょっと心配でね。近頃、君もレイも凄く疲れた顔をしているから。仕事が原因じゃないことくらい、僕にも分かるよ」
「……先生」

 すると、すぐ横で着替えをしていたモラレスさんも、 俺の方を向いて腰に手を当てながら言う。

「深刻なことが起きているのよね? 話してくれないかしら。見てて物凄く心配なのよ。アタシたちに出来ることがあれば何でもするから」
「……はい」

 もはや俺たちの事情は誰もが知っている。レイの過去も、生みの親が彼女の前に現れた話も全て。
 事情が知れ渡った時、ジャスティン先生やモラレスさん、スタジオ仲間や生徒たちがレイを心配してくれ、そして応援の声までも向けてくれた。
 もう隠す必要なんて何もない。それにこの問題は、二人だけでは背負いきれないほど深刻だ。
 何か大きな事件が起こる前に。信用している人たちには話さなければいけない。
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