サルビアの育てかた
「そうなのね……。ごめんね、レイちゃんがこんなことになったのはアタシの責任だわ」
「どうしてモラレスさんが謝るんです?」
「その日のライブ後、レイちゃんを一人にしないよう気をつけるべきだったわ。送迎の専属ドライバーはちゃんといるのよ。でもたしかその日は──ドライバーがなかなかライブ会場に来られなくてね。レイちゃんは疲れているから先にホテルに戻ると言って。それで、先に帰らせちゃったの。あの時、せめて他のスタッフも一緒にレイちゃんと先に帰らせるべきだったわ」

 モラレスは見たこともないような落ち込んだ顔をして、声すらも少し低くなっていた。
 そんなモラレスの隣で、今度はジャスティン先生が声を暗くする。

「いや、元はと言えば僕の生徒がマスコミにあんな重大事項を漏らさなければよかったんだ。ごめんね、ヒルス……僕がちゃんと事情を把握していれば防げたかもしれないのに」
「いえ……」

 一気に場の雰囲気が暗くなってしまう。

 隣の部屋から、モラレスさんの軽快な音楽が流れるのが微かに聞こえてくる。レイが楽しそうに踊る姿が目に浮かんだ。それなのに、この場にいた俺たちの空間だけは嘘みたいに静まり返っている。

 俺は言葉に詰まらせた。なぜ二人共頭を下げているのか。困惑してしまう。

 今更どうでもいいんだ。あの時、こうしていればよかったなんて考えたところで事態は何も変わらない。それよりも今は、これからどう対処していけばいいかをしっかり話し合いをしたかった。
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