サルビアの育てかた


 寒い時期に片足を踏み込む季節。町中に佇む並木たちは、葉の色を黄や赤に染め上げていて、一年で最も綺麗な風景を楽しませてくれる。

「あんなに小さかったレイが、もう二十代になるのか。何だか信じられないな」

 のどかな風景に癒やされながら、俺はレイの隣でぽつりと呟く。
 久しぶりの休日。俺とレイは郊外の小さな町に出て、のんびり散歩をしながら過ごしていた。
 これと言った珍しい観光地など何もない。人通りも少なく、繁華街とは違って時間がまったり流れていくような感覚にさせてくれる。俺はこういう雰囲気の方が好きだった。

 横に並んで歩くレイは、俺の右腕をしっかりと組みながら何だか嬉しそうに笑っている。

「小さい頃、ヒルスはいつも私のこと子供扱いしてたのに、最近は全然そんなことなくなったよね」

 綺麗なナチュラルメイクに目元を光らせ、お下げ姿のレイは、昔から顔つきは変わっていない。それなのに雰囲気だけはすっかり大人の女性となっていた。

「そりゃ、レイが小さい頃は凄く歳が離れているように感じていたからな。でも今は、レイが七つも歳が下だなんて思えない」
「それって、私が大人の魅力で溢れてるってことかな」
「……お前な」

 こうしてすぐに調子に乗る性格は幼い頃から変わらない。
 けれど、そんなレイにもしっかりしている部分はある。家事が出来るとか俺を支えてくれようとする優しさだとか、仕事に対して真面目に取り組む姿勢だとか。たまに衝動で行動してしまうのは今も変わらないが、それも含めて全てが彼女の魅力だと俺は思っている。
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