サルビアの育てかた

 そんな俺の様子を見て、レイは目を細めている。

「ごめん、変なこと聞いちゃった。ヒルスはずっと前から私を大事にしてくれていたよね」
「……だけど、レイが家に来てからしばらくは、冷たい態度ばかり取っていた。あの時は、悪かったよ」
「それはもう気にしてないから大丈夫。ヒルスの気持ちも分かるし。全然知らない三歳の子が急に家族になれるわけもないし、お父さんとお母さんはその女の子に付きっきりになるんだもの。ヒルスが悪い子だったら、もしかしたら私なんてイジメられてたかもしれないよね」
「俺はそんなことをしたりしない……」
「分かってる。ヒルスは優しい人だよ。だからよく分からない女の子が家にいても、冷たくあしらうくらいで済ませたんでしょう? いいお兄ちゃんだよね」

 レイは平然とそう言うが、何だか皮肉を言われているような気がするのは俺の思い違いか?

 何も答えられずにいると、レイは肩を震わせて笑うんだ。

「ヒルス、真に受けてる。可愛い」
「はぁ?」

 レイのふざけたような、この口振り。
 ああ、久しぶりだな……。俺をからかってくるこの感じ。
 俺は「調子に乗るな」と言いつつも、胸の中では嬉しくて踊り回っている。
 恥ずかしい気持ちもあったが、俺も訊いてみたい。彼女の目をしっかりと見つめ、首を捻った。

「レイは、いつからなんだ?」
「えっ」
「いつから俺を好きになってくれたのか、訊かせてくれよ」

 俺の問いかけに、レイは頬をピンク色に変えて顔を下に向けた。小さな声でゆっくりした口調で答えてくれるんだ。

「……ヒルスが、私のスーパーヒーローになってくれた、あの日からだよ」

 その答えに、胸の奥がぐんと赤くなっていくのを感じた。
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