サルビアの育てかた
 首を小さく振り、レイは急に真顔になって言うんだ。
「──あのね、ヒルス」
「何だ?」
「来週のこと、モラレスさんから聞いてる?」

 未だに体が火照ってるレイは、少しばかり俺との目線を逸らしつつ話をする。

「来週、ジャスティン先生のスタジオの練習場を借りたいんだって。これから出す新曲のダンスの打ち合わせがあるらしいの」
「ああ、そうなのか。今は日本でツアー中じゃなかったか?」
「明日が最終日なんだって。終わったらすぐこっちへ来るみたい」
「相変わらず忙しい人だな」
「だから、もし練習場が空いてたら使わせてもらいたいって連絡が来たの」
「ジャスティン先生に確認してみないとな。電話で聞いてみるよ」
「いいの? 助かる」

 俺は鞄の中を漁ってスマホを捜してみる。が、どこにも見当たらない。

「ああ、やべ。車に置いてきたな……」

 普段からあまりスマホを弄ったりしない俺は、度々車内に忘れてきてしまう。

「車まで取りに行ってくる。……準備して待っててくれるか?」
「う、うん」

 俺がわざと甘えた声を出すと、レイの全身がまたもや赤くなる。いちいち可愛らしい反応をしてくれるんだよな。

 外に出ると、ひんやり冷たい空気が俺の全身にまとわりつく。静かに夜を照らす星空の下、俺の口角だけは緩んだままだった。
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