サルビアの育てかた

(結婚か……あまり考えたことがなかったな)

 いや、少しだけ考えたことがあったな?
 白い息を吐き、俺はふと「あの日」を思い出した。

 一人暮らしをして初めて熱を出した日だ。レイが俺を看病しに来てくれて、あの瞬間に俺はこう思ったな。

『レイはきっといい奥さんになる』
『将来結婚する奴が羨ましい』

 熱で弱っている俺の身の回りの世話を、何も言わずとも要領良くこなしてくれる彼女を見て俺はたしかにそんな風に考えていた。

 あの日の俺に言ってやりたい。お前が羨ましいと思っていた相手は、正しく自分自身になるかもしれないぜ、と。

 俺とレイは人生の半分以上を同じ時間、同じ空間を二人一緒に過ごしてきた。お互い隣にいるのが当然であり、それでいてこれ以上ないほどに居心地がよく、深く信頼し合っていて、日を追うごとに愛がどんどん大きくなっている。
 そばにいるのが日常的になっているからこそ、俺は彼女との将来をしっかり考えていくべきなのかもしれない。
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