サルビアの育てかた
 あれこれ考えていると、俺の周りを冷たい風がしつこく通り過ぎて行く。更に体温を奪われた俺の身体が、ブルッと震えながら小さく唸っている──その時だった。

「お待たせ」

 後ろから、可愛い声を出しながら俺の体に腕を回して抱きついてくる彼女が現れた。
 凍えていた俺の身体は、一気に熱に包まれたように火照っていくんだ。

「お、おい……」

 彼女は抱きつく腕の力を更に強めていく。か細い両手で、一生懸命俺の体を引き寄せようとするレイのそんな行動が愛おしい。

 俺はたまらず彼女の腕を優しく掴み取り、そのままレイの顔と俺の体を向かい合わせにした。

「こんな所で抱き合ってたら、誰かに見られるぞ?」

 そう言いつつも、俺は両手でレイをグッと包み込んだ。

「ヒルス」
「うん?」
「誰かに見られたら困るの?」
「全然。何も困らないよ」

 そう囁いた。レイのぬくりもは、俺の理性を壊してくるんだ。

 家に帰ればいくらでも触れ合えるのに、彼女の顔を見ただけで仕事の疲れを癒やしてほしいという欲求が、俺の中で爆発してしまう。

 静かな時が過ぎていく。暫しの間俺たちは身を寄せ合い、互いのぬくりもを分かち合った。
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