サルビアの育てかた
◆
帰宅後。
就寝前に、私はヒルスにも電話で今日のことを報告した。
『レイがセンターでソロを踊るのか!』
電話越しで、ヒルスが声を弾ませている。
『さすがだな。次のイベントも必ず応援に行くよ。母さんたちも喜んでるだろ?』
「うん。すごく喜んでくれたよ。お父さんなんて古いワインも開けてた。『今日はめでたい日だ』って言って」
『父さんらしいな。ただ自分が飲みたいだけじゃないか』
「ふふ。お母さんも同じこと言ってたよ」
楽しそうにヒルスが笑っているのが聞こえてきて、私も頬を緩ませる。
『明後日はスタジオが休みだから、明日の夜にまたそっちに行くよ』
「うん、待ってる。ねえ、ヒルス。お仕事はどう? もうだいぶ慣れた?」
『ああ、そうだな。人にダンスを教えるやりかたは無限だからな。試行錯誤しながらだけど、なんとかやってるよ』
「ヒルスは教えかたが上手だもん。きっと大丈夫だね。スタジオにはどんな先生たちがいるの?」
なにげなく訊いてみただけだった。私は一度もダンススタジオへ行ったことがないから、ヒルスが普段どんな人たちと一緒にお仕事をしているのか知りたかったの。
彼は朗らかに話し始めた。
『俺とジャスティン先生以外に三人いるんだけどな。俺とは比べものにならないくらい積極的で、尊敬できるイントラばかりだよ。特にフレアっていう二つ上の先輩がいるんだけどな』
「フレ、ア? えっと、その人って女の人……?」
『ああ、そうだよ。フレアはダンスの教えかたが上手いだけじゃなくて、いつも俺によくしてくれるんだ。本当に頼りになる先輩でな──』
電話の向こうで、ヒルスが活き活きとした声で語ってる。
フレアっていう女の人と仲がいいんだね……?
この感覚はなんだろう。なぜかモヤモヤしてしまうの。
喜ばしいことでしょう? ヒルスが恵まれた環境でお仕事ができているんだから。
『──で、フレアはなんでも話せる相手なんだよ』
「……」
『んっ? レイ、聞いているか?』
「えっ。う、うん。聞いてるよ。ヒルス、スタジオでのお仕事頑張ってるみたいだね。よかった、楽しそうで」
『まあな。ジャスティン先生にもスタジオの仲間にも感謝しないとな』
「そうだね。これからも、頑張ってね!」
どうにか明るく返事をしてみせた。実際は釈然としていないのに。
『ああ、今日も遅いな。長々と話して悪かったな』
「ううん、全然。ヒルスのお話、たくさん聞けてよかったよ。……おやすみ」
『ああ。おやすみ、レイ』
通話を終えたあと、私はベッドに横たわる。
あれほどまでに彼が愉快に話すなんて珍しい。よほど、スタジオでのお仕事が充実しているんだね。仲間もいい人たちでよかったね。私も嬉しいよ……。
羽毛布団をギュッと握りしめ、私はしばらくしてから眠りについた。
帰宅後。
就寝前に、私はヒルスにも電話で今日のことを報告した。
『レイがセンターでソロを踊るのか!』
電話越しで、ヒルスが声を弾ませている。
『さすがだな。次のイベントも必ず応援に行くよ。母さんたちも喜んでるだろ?』
「うん。すごく喜んでくれたよ。お父さんなんて古いワインも開けてた。『今日はめでたい日だ』って言って」
『父さんらしいな。ただ自分が飲みたいだけじゃないか』
「ふふ。お母さんも同じこと言ってたよ」
楽しそうにヒルスが笑っているのが聞こえてきて、私も頬を緩ませる。
『明後日はスタジオが休みだから、明日の夜にまたそっちに行くよ』
「うん、待ってる。ねえ、ヒルス。お仕事はどう? もうだいぶ慣れた?」
『ああ、そうだな。人にダンスを教えるやりかたは無限だからな。試行錯誤しながらだけど、なんとかやってるよ』
「ヒルスは教えかたが上手だもん。きっと大丈夫だね。スタジオにはどんな先生たちがいるの?」
なにげなく訊いてみただけだった。私は一度もダンススタジオへ行ったことがないから、ヒルスが普段どんな人たちと一緒にお仕事をしているのか知りたかったの。
彼は朗らかに話し始めた。
『俺とジャスティン先生以外に三人いるんだけどな。俺とは比べものにならないくらい積極的で、尊敬できるイントラばかりだよ。特にフレアっていう二つ上の先輩がいるんだけどな』
「フレ、ア? えっと、その人って女の人……?」
『ああ、そうだよ。フレアはダンスの教えかたが上手いだけじゃなくて、いつも俺によくしてくれるんだ。本当に頼りになる先輩でな──』
電話の向こうで、ヒルスが活き活きとした声で語ってる。
フレアっていう女の人と仲がいいんだね……?
この感覚はなんだろう。なぜかモヤモヤしてしまうの。
喜ばしいことでしょう? ヒルスが恵まれた環境でお仕事ができているんだから。
『──で、フレアはなんでも話せる相手なんだよ』
「……」
『んっ? レイ、聞いているか?』
「えっ。う、うん。聞いてるよ。ヒルス、スタジオでのお仕事頑張ってるみたいだね。よかった、楽しそうで」
『まあな。ジャスティン先生にもスタジオの仲間にも感謝しないとな』
「そうだね。これからも、頑張ってね!」
どうにか明るく返事をしてみせた。実際は釈然としていないのに。
『ああ、今日も遅いな。長々と話して悪かったな』
「ううん、全然。ヒルスのお話、たくさん聞けてよかったよ。……おやすみ」
『ああ。おやすみ、レイ』
通話を終えたあと、私はベッドに横たわる。
あれほどまでに彼が愉快に話すなんて珍しい。よほど、スタジオでのお仕事が充実しているんだね。仲間もいい人たちでよかったね。私も嬉しいよ……。
羽毛布団をギュッと握りしめ、私はしばらくしてから眠りについた。