サルビアの育てかた
第八章
次の日、ダンススタジオで仕事を終えた俺とレイは、車に乗ってダンススクールへ向かっていた。
──父からのプレゼントを受け取る為に。
最初はどういうことなのか分からなかった。なぜこの世を去ったはずの父から贈りものが届くのか。
ジャスティン先生の話によると、父は生前タイムカプセルというサービスを利用していたようだ。レイの二十歳の誕生日に、指定したプレゼントや手紙が届くというシステムらしい。そのサービスを通じて、実家の跡地に建設されたスクールに届いたと言うのだ。
これはきっと運命で、奇跡だとさえ思う。日付を一ヶ月間違えてしまうのは父らしいというか、致し方ないと言うべきか。
そんな父からのプレゼントを受け取りに行くのだから、ワクワクしてもいいはずなのに。レイの顔は強張っている。助手席に座りながら、さっきから口数が少ない。
「大丈夫だから。そんな顔するなよ」
渋滞に巻き込まれつつ、停車した時に俺は彼女の顔をちらりと見る。いつものようにそっとレイの右手を握り締めた。
「もう、何も心配しなくていいんだぞ」
「うん……そうだよね。ありがとう、ヒルス」
力が抜けたように、レイはこくりと頷いた。
彼女は今、ダンススクールでの出来事を思い出してしまっているのだろう。レイを傷つけてきた、あの悪女との記憶は嫌なものとして残り続けている。
だけど、もう不安になる必要なんてない。
──父からのプレゼントを受け取る為に。
最初はどういうことなのか分からなかった。なぜこの世を去ったはずの父から贈りものが届くのか。
ジャスティン先生の話によると、父は生前タイムカプセルというサービスを利用していたようだ。レイの二十歳の誕生日に、指定したプレゼントや手紙が届くというシステムらしい。そのサービスを通じて、実家の跡地に建設されたスクールに届いたと言うのだ。
これはきっと運命で、奇跡だとさえ思う。日付を一ヶ月間違えてしまうのは父らしいというか、致し方ないと言うべきか。
そんな父からのプレゼントを受け取りに行くのだから、ワクワクしてもいいはずなのに。レイの顔は強張っている。助手席に座りながら、さっきから口数が少ない。
「大丈夫だから。そんな顔するなよ」
渋滞に巻き込まれつつ、停車した時に俺は彼女の顔をちらりと見る。いつものようにそっとレイの右手を握り締めた。
「もう、何も心配しなくていいんだぞ」
「うん……そうだよね。ありがとう、ヒルス」
力が抜けたように、レイはこくりと頷いた。
彼女は今、ダンススクールでの出来事を思い出してしまっているのだろう。レイを傷つけてきた、あの悪女との記憶は嫌なものとして残り続けている。
だけど、もう不安になる必要なんてない。