サルビアの育てかた
 やがて先生との通話を終えると、レイはなぜか目の奥を少しだけ潤わせているんだ。口に手の平を当てて、もう一度俺に抱きついてくる。

「どうしたんだ、レイ。先生、何だって……?」

 レイは微かに震えていた。寒いわけでもなく、何かに怯えているわけでもなく、何となく彼女が感極まっているのが伝わってきた。
 俺の瞳を見つめながら、レイは優しく微笑する。

「お花が……届いたの」
「花?」
「うん……。『サルビア』のお花がね、届いたんだよ」
「誰から?」

 ──お父さんから。

 嬉し涙を流すレイの言葉が、俺は一瞬理解出来ずにいた。
 父が、レイの二十歳の誕生日にサプライズをしようとしていたなんて、俺もレイもその時まで知らなかったから。
< 691 / 847 >

この作品をシェア

pagetop