サルビアの育てかた
 ついさっきの話。父と喧嘩してしまった。
 あのときの会話を思い出すと後悔でいっぱいになる。

「レイ」
「……なに?」

 自室に籠って音楽を聴いていると、父が私のところへやって来た。厳しい顔をして腕を組み、明らかに呆れた様子。

「最近、帰りが遅いな。どこでなにをしているんだ」
「今日はちゃんと家にいるでしょ」
「夕飯も全く家で食べなくなったじゃないか。余所様に迷惑をかけている訳じゃないだろうな」
「かけてないよ、うるさいなぁ……」

 話したくなかった。鬱陶しかった。
 どうしてこの人は父親面(・・・)しているんだろう。腹が立って仕方がなかった。

「父さんも母さんもヒルスも、心配しているんだぞ。夜遅くまで出歩くのは今後やめなさい」
「なんであなたに指図されないといけないの?」
「そういうつもりじゃない。なにかあったらどうするんだ」
「あんたには関係ないでしょ」
「口の聞きかたに気をつけなさい。娘なんだから関係あるに決まっているだろう」

 ──娘?

 その一言がきっかけで、私の行き場のない怒りが爆発してしまった。父を睨みつけ、出任せで酷い言葉を投げつける。

「よくそんなこと言えるよね。別に、私はこの家の子じゃなくてもいいんだよ! 出て行ったって誰も悲しまないでしょ?」

 父は一瞬憂いのある表情を見せた。だけどすぐに顔を真っ赤に染め、怒号を向けてきた。

「だったら出て行きなさい!」
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