サルビアの育てかた
 ──あのとき、初めて父に怖い顔で怒鳴られた。どんなときも甘えさせてくれる、優しい人だったのに。
 本当は分かっているの。私が悪いことも、全部。

 気づけば、夕陽は西の国に帰るようにその姿を消し去っている。周囲は一気に闇に包まれた。まるで今の私の心を映しているみたい。

 ため息まじりで、暗くなった道を歩き続ける。なぜだか私の足は勝手に「ある場所」を目指していた。
 彼と二年前まで通った、大好きだった場所。夢中になって踊ったダンススクールに、無意識のうちに足が向いていた。

 彼のことを思い出すと、たちまち胸がキュッとなる。自分でもよく分からない感覚。
 他人だよ、家族でも兄でもないんだよ。それなのに、どうして……?

 歩きながら、私は家族との日々を思い出した。
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