サルビアの育てかた
◆
きっかけは、私が十二歳のときだ。
ダンスレッスン後、突然メイリーに呼び出されたことがあった。
彼女が待つスクール近くの公園まで急いで向かうと、腕を組みながらきつい目つきで私を眺めるメイリーがいた。
もしかしてイベントの件で何か言われるのかな。ソロのことでダメ出しとか。嫌だな……。でも、ちゃんと話は聞かないといけない。メイリーはクラスの先輩で、仲間だから。
できるだけ笑顔を作って、私は軽く会釈をする。
「メイリー、お待たせ。お話ってなに?」
大丈夫、いつもどおりで。メイリーの目は一切笑っていなかったけど、怖くないよ。そう自分に言い聞かせる。
彼女はいつものように、私と話すときにだけ出す低い声で口を開いた。
「ちょっとね、二人だけで話したくて」
「うん」
「あなたの親と、ヒルスのことなんだけど」
「私の家族がどうしたの?」
「……家族、ねぇ」
私のなにげない一言に、メイリーは嘲るように見下ろしてくる。威圧感があってちょっと怖い。
「やっぱり知らないのね、可哀想」
「なにが?」
私が首を捻ると、メイリーは冷たい眼差しのまま、語尾を強くした。
それから次に、信じられない話を始めるの。それは私にとって、とても受け入れられない内容だった。
「あなたってさ──ヒルスの本当の妹じゃないのよ」
そう言い放ったメイリーの顔に一切の優しさや情なんてものはない。むしろ嫌悪感のようなものが伝わってきた。
「もちろんあなたの親もニセモノなのよ」
「ちょっと待って。どういう意味……?」
彼女の話が全く理解できず、無意識のうちに瞬きの回数が増えてしまう。
呆然とする私に向かって、メイリーはお構いなしに話を続ける。
「この話、ヒルスが親と話していたのをこっそり聞いちゃったのよねぇ。あなたは孤児院から引き取られてきた、どこの誰の子か分からない娘らしいわよ? 三歳のときだからあなたは覚えていないんでしょうけど。ヒルスに直接確認したし、間違いないわ」
──待って、待ってよ。一体、なんの話をしているの?
ついていけず、頭が真っ白になっていった。
「こんな大事なことも知らせてもらえないなんてねえ。本物の家族じゃないから仕方ないわよね」
「……」
「それに、スクールに通うのだって月謝がかかるんだから! 赤の他人のあなたが、ヒルスのお父さんとお母さんに負担をかけるのもおかしな話よね!」
悪意を持ったような口ぶりでメイリーははっきりとそう言い放つ。
どうしよう、胸が苦しい。
きっかけは、私が十二歳のときだ。
ダンスレッスン後、突然メイリーに呼び出されたことがあった。
彼女が待つスクール近くの公園まで急いで向かうと、腕を組みながらきつい目つきで私を眺めるメイリーがいた。
もしかしてイベントの件で何か言われるのかな。ソロのことでダメ出しとか。嫌だな……。でも、ちゃんと話は聞かないといけない。メイリーはクラスの先輩で、仲間だから。
できるだけ笑顔を作って、私は軽く会釈をする。
「メイリー、お待たせ。お話ってなに?」
大丈夫、いつもどおりで。メイリーの目は一切笑っていなかったけど、怖くないよ。そう自分に言い聞かせる。
彼女はいつものように、私と話すときにだけ出す低い声で口を開いた。
「ちょっとね、二人だけで話したくて」
「うん」
「あなたの親と、ヒルスのことなんだけど」
「私の家族がどうしたの?」
「……家族、ねぇ」
私のなにげない一言に、メイリーは嘲るように見下ろしてくる。威圧感があってちょっと怖い。
「やっぱり知らないのね、可哀想」
「なにが?」
私が首を捻ると、メイリーは冷たい眼差しのまま、語尾を強くした。
それから次に、信じられない話を始めるの。それは私にとって、とても受け入れられない内容だった。
「あなたってさ──ヒルスの本当の妹じゃないのよ」
そう言い放ったメイリーの顔に一切の優しさや情なんてものはない。むしろ嫌悪感のようなものが伝わってきた。
「もちろんあなたの親もニセモノなのよ」
「ちょっと待って。どういう意味……?」
彼女の話が全く理解できず、無意識のうちに瞬きの回数が増えてしまう。
呆然とする私に向かって、メイリーはお構いなしに話を続ける。
「この話、ヒルスが親と話していたのをこっそり聞いちゃったのよねぇ。あなたは孤児院から引き取られてきた、どこの誰の子か分からない娘らしいわよ? 三歳のときだからあなたは覚えていないんでしょうけど。ヒルスに直接確認したし、間違いないわ」
──待って、待ってよ。一体、なんの話をしているの?
ついていけず、頭が真っ白になっていった。
「こんな大事なことも知らせてもらえないなんてねえ。本物の家族じゃないから仕方ないわよね」
「……」
「それに、スクールに通うのだって月謝がかかるんだから! 赤の他人のあなたが、ヒルスのお父さんとお母さんに負担をかけるのもおかしな話よね!」
悪意を持ったような口ぶりでメイリーははっきりとそう言い放つ。
どうしよう、胸が苦しい。