サルビアの育てかた
 万が一にでもこの話が本当なら、私は家族だと思っていた人たちにずっと迷惑をかけていたことになる。そう思うと、何も言えない。メイリーの嘲笑うかのような声に、とうとう私は俯くことしかできなくなった。
 ──いや、嘘だ。私が孤児院から来た子供だなんて。お父さんとお母さんが本当の親じゃないなんて。それに、兄であるはずのヒルスとも赤の他人?

 思い返せば──たしかに私は家族の誰とも似ていない。両親も兄のヒルスも、地毛が綺麗な金色なのに私一人だけ漆黒の髪色だ。
 目元だって父とヒルスは少しつり目で母は一重であるのに、私だけ大きなぱっちり二重。
 肌も、違うと思っていた。ヒルスたちは白人らしい色なのに、私だけは小麦肌だ。
 だけど……ちょっと見た目が違うだけで、そこまで深く気にしたことなんてなかった。まさか自分が、家族と血の繋がらない赤の他人だなんて思いもしなかったから。
 あれこれ考えるうちに、目の前がぼやけてしまう。頬のあたりが冷たく、湿っていく。
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