サルビアの育てかた
 俺の息は荒くなる一方だ。ついさっき見たあの恐怖の映像が、脳裏に焼きついて離れない。

(一体どういうことだ……?)

 手に汗を握り締め、俺はどうにか駐車場に車を停めてエンジンを切る。その瞬間、沈黙の世界に埋めつくされてしまい、耳が痛くなるような感覚に陥る。

 俺の身体は未だに震えが止まらない。

「どうして、あの女が……」

 心の声が漏れていることにも気づかず、俺は深く息を吐き出す。

 ふと隣を見てみると、レイは目を覚ますこともなくスヤスヤと小さく寝息を立てたままだった。

 ──レイには絶対に言えない。あの女が、悪魔が、この周辺を彷徨いていたなんてこと。
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