サルビアの育てかた
 窓側のテーブル席に着き、限られた時間の中で俺たちは食事を始める。
 ある意味こういう時間が一番辛いのかもしれない。リラックスし過ぎると、たちまち思い浮かべてしまうレイの顔。いつもと何ひとつ変わらないあの笑顔を思い出すと、俺の心はえぐられる。
 もう何日彼女に触れていないのだろう。本当はレイの手を握りたくて仕方がないのに。
【義理の兄妹】という言葉を思い出すと、俺は以前のように彼女にスキンシップを取るということが怖くなってしまった。

 無意識に深い深い、大きなため息が漏れた。

「ヒルス先生」
「……ん?」
「最近元気がないですね。大丈夫ですか?」

 ジュースを片手に、ロイはじっと俺を見つめてくる。

「レイさんのことで悩んでいるみたいですね」

 あまりにも真剣な眼差しだった。ロイからそんな言葉を投げかけられるものだから、俺はぎくりと焦りの感情が滲み出てしまう。

 いや、だけど。もはや俺たちの事情には隠し事なんて何もない。それに、ロイは生徒の中でも唯一信用できる相手だ。

 このモヤモヤを一人で抱え込んでいつまでも沈んでいるより、信頼できる相手に聞いてほしかった。
 俺はロイの顔にしっかりと視線を向けて、自分の中に纏わりつく悩みの種を全て打ち明けることにした。
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