サルビアの育てかた
聞いてみると、レイの声は更に震えていた。
『ヒルス……ごめんね。やっぱり怒ってるよね。私、決めたよ。あの悪魔と決別してくる。何度か呼び鈴を鳴らしてからあの人、いつの間にか部屋の前からいなくなったみたい。でもまだきっと近くにいる。それに、またいつここに来るか分からない。このまま逃げていたって、何度も追いかけられるって分かってるの……。でもね、あの女は私を求めているわけじゃない。ただ、お金が欲しいだけ。だったらお金をたくさん渡して、もう私たちに近づかないように交渉してみる。私はいつも守られているから、今度は私がヒルスを守る番だね。だから、安心して』
そのメッセージを聞いた瞬間、俺の全身に嫌な汗が滲み出る。身体が動かない。状況を判断するのにはとても時間がかかる事態だ。
(安心してって、レイは何を言っているんだ。今度はレイが俺を守る、だと? どうして俺がレイに守られなくちゃならない? 俺は、レイのヒーローだぞ)
たった一人であの悪魔に会いに行くだなんて、危険極まりないにもほどがある。
見るからに狂気に満ちたあの女は、何をするか分からないんだ。金を無心するだけではないかもしれない。
もしもレイの身に何かあったら……
考えると俺は今にも発狂してしまいそうになる。