サルビアの育てかた
ここでじっとしているわけにはいかない。
硬直していた身体を無理矢理動かした。
約束したんだ。スーパーヒーローとして、何かあればレイの所に必ず駆けつけると。
無心で玄関のドアを開け、エレベーターに駆け込む。一階一階降っていくこの乗り物は、どうしてこんなにも遅く感じてしまうのだろう。
『ヒルス。あんなに酷いこと言っちゃったけどね、私の家族はあなたと、天国にいるお父さんとお母さんだよ。もう悲観したりしない。ヒルスはいつの日か言ってくれたよね。私たちには固い絆があるって。あの言葉を思い出すと、気持ちが楽になるの。……ヒルス、私のお兄ちゃんになってくれてありがとう。私を大切にしてくれて、愛してくれて幸せだったよ。私の人生は、あなたとの思い出でいっぱい。ヒルスがずっとそばにいてくれたから、私は今までたくさんの幸せをもらったよ。どんなに辛いことがあっても、二人で乗り越えられた。たとえ何があっても前を向いて生きてこられた。あなたは私のたった一人の家族で、誰よりも大切な人。世界で一番大好き』
──そこでメッセージは終わりを告げた。
彼女の声はか細く、時折言葉に詰まっていてまるで何かを示唆するような話しかただ。
こんなレイの言葉など、今の俺には全く響かない。なぜ改まった言いかたをするのか。なぜ彼女は俺に感謝の言葉を向けるのか?