サルビアの育てかた
「ずっと見てたよ」
「……えっ?」
「お兄ちゃんのこと、ずっと見守ってたの! もう、我が兄ながらヘタレすぎて呆れちゃうよ」
「な、何だよいきなり」

 この勢いに、俺はタジタジだった。
 妹は頬を小さくすると、今度は困ったような表情を浮かべるんだ。

「どうしてお兄ちゃんは、迷っているの? あの子を──レイを独りぼっちにするつもり?」
「それは……」

 返事に困ってしまう。もし俺がここに残ってしまったら、確かにレイは独りになるだろう。
 ふうと息を吐き、俺は静かに首を振った。

「レイは、強い子だ。周りの人にも愛されている。もし俺があっちに戻らなくても、レイなら前を向いて生きていける。これ以上俺たちが一緒にいたら、また辛い出来事が待っているかもしれない」

 今までで一番消極的な俺の考えだった。自分でも驚くほどに。
 こんな俺を見て、妹はすかさず怪訝な顔になる。

「格好悪っ」
「……何だって?」
「超絶にだっさい! 鳥肌立っちゃう! あれあれ? お兄ちゃんってさ、レイのスーパーヒーローとか何とか言ってイキッちゃってたよね? レイと幸せになるんだとか豪語してたよね。今は何? レイを置いてけぼりにしようとしてさ。ヒーローなんて笑っちゃうよね! マジキモい!」

 妹がぶつけてくる言葉の数々は、俺の胸をグサグサとぶっ刺してくるほど強烈なものだった。

 そこまで言うか?
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