サルビアの育てかた
 ──目の前にいる妹は本物、ということか? 魂か何かが俺の意識の中に声を届けているということなのか。そんな空想みたいな話、あるわけがない。
 しかし、目の前にいる妹は奇妙なほど現実的で。俺は頭の整理が追いつかなくなってしまう。

 俺が疑問符を浮かべていると、妹はそこでふっと微笑んだ。

「……ま、夢でも現実でもどっちでもいいんだけど。わたしの話、聞いてくれる?」

 口調はあくまで冷静だ。
 俺たちがこんなやり取りをしている間に、再び小さな箱に詰められた赤子のレイがぼんやりと現れた。
 身体の至るところに黒い痣があり、鎖骨下の火傷の痕は皮膚が痛々しいほどにえぐられている。赤子のレイは、力なく泣き続けていた。
 再び、俺は胸が痛くなる。吐き気がするほどの嫌悪感。
 何度だって言う。こんなレイの姿、見たくないんだ。
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