サルビアの育てかた
「怖かったよ……このままヒルスが目を覚ましてくれなかったらどうしようって、ずっと考えてた……。お医者さんにも、どうして起きないのか分からないって言われるし。ヒルスのこと何回も呼んだんだよ。それなのに、私の声が全然届いてないみたいで本当に怖かった。寂しかったよ……!」

 ひとつひとつの言葉を、レイはゆっくりと俺に向ける。
 彼女がこれほどまでに俺を心配してくれていたなんて。嬉しかった。愛情が痛いくらいに伝わってくるから。

「レイ」
「……なに?」
「キスしよう」

 言いたいことはたくさんあるけれど、何よりも先にレイとの愛を重ねるのが先だ。
 彼女の髪にそっと触れ、ゆっくりと彼女を引き寄せてから、俺たちは静かに口づけを交わす。

 ――長い間離ればなれになっていた愛しい人とのキスは、弱っていた俺の心に元気を与えてくれる。

(こんなに大切なものを俺は手放そうとしていたのか……)

 俺の想いを君に捧げたい。一生かけても伝えきれないほどの愛を、存分に。
 全てを受けとめるかのように、レイもそれに応えてくれた。
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