サルビアの育てかた
 彼女はこちらをじっと見つめ、小刻みに震えながらみるみる驚いた顔になる。

「……ヒルス?」

 緊張したような、安堵したような、色んな感情が入り混じった声で俺の名を呼ぶレイ。

 ──ああ、レイだ。本当に、彼女なんだ。

 その声を聞いただけで、胸の奥までじんわりあたたかくなる。
 たちまち涙目になるレイは、弱々しく、けれでも精一杯の力で俺に抱きついてきた。

(……これだ。俺が、ここに戻ってきた理由)

 たくさんのぬくもりが伝わってきて、何とも言えない気持ちが溢れる。

「……ヒルス、やっと起きてくれた……!」
「うん。おはよう、レイ」

 呑気に俺がそう返事をすると、レイは顔を真っ赤にしていた。

「おはよう、じゃないよ。ずっと目を覚ましてくれないから、凄く心配してたんだよ……!」
「ずっと? 俺、どれくらい眠ってたんだ?」

 あの事件が起きたのは、昨夜のことだとばかり思っていた。だけど――レイの話を聞いて驚愕してしまう。
 俺はあの後気絶してから、なんと一週間も眠り続けていたのだという。
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