サルビアの育てかた
 レイは目を細めながら見る見る柔らかい表情に変わり、小さな手で俺の頬にそっと触れる。愛しさでいっぱいの綺麗な手に撫でられると、この上ないほどの幸福を感じられる。

「そばにいてくれるだけでいいの。二人でいれば、どんな困難も乗り越えられるっていつも言ってるでしょ?」
「どんな困難も……か。また痛い思いをするかもしれないな」
「私を守るために無茶しすぎたんだよね。ごめんね。でもあの時のヒルス、呆れちゃうくらい格好良かったよ……。もう二度と、あんな危険なことしないで」
「ヒーローは、どんなことがあっても大事な人を命懸けで守るものだ」

 弱ったままの身体なのに、こんな時でさえ俺は彼女の前で格好つけようとしている。
 レイは俯き加減になり、俺の指先を握ってから深く息を吐いた。

「もう、命を懸けてもらう必要なんてないよ」
「えっ?」
「悪魔は……あの人はもう、二度と私たちの前には現れないから」

 レイはひとつひとつの言葉を丁寧に発し、ゆっくりと話をした。
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