サルビアの育てかた

 レイは目線を俺の方に移すと、またいつもの愛らしい笑みを浮かべた。

「私たち、これから良い家庭が築けるかな?」
「何言ってるんだよ。当たり前だろ?」
「当たり前だといいなぁ」

 俺はもう一度優しく抱擁すると、彼女の耳元で囁いた。

「俺とレイならきっと大丈夫。父さんと母さんが『サルビア』の花を通して教えてくれただろう」
「……どんなことを?」

 わざとらしく聞いてくるレイに、俺は自然と笑みが溢れる。
 彼女も分かっているはずだ。だから、敢えてそこで答えを口にするようなことはしない。その代わりに、何度目かも分からない愛をレイに口づけをすることによって伝えた。

 ──レイ。大好きなレイ。俺はもう二度と、君から逃げたりしない。
 これからは君と楽しい家庭を築いていくと、心に決めたんだ。新しい家族を迎え入れる準備も出来ている。レイが頷いてくれるのなら、俺はいつでも二人の愛の証を手にしたいと本気で思っている。それだけは忘れないで。

 赤と白の『サルビア』たちが月明かりに照らされながら、二人の愛をいつまでも見守ってくれた。
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